【大学院】博士課程に行くのはどうなの?【現役旧帝大学院生が解説】

博士課程への進学を悩んでいる人「大学院の博士課程への進学を考えているので、博士課程について詳しく教えてほしい。博士課程に進学することのメリットを教えてほしい、また博士課程に進学する際に考えておくべきことはある?」
こういった疑問に答えます。
本記事でわかること
- 博士課程について解説【修士課程との比較あり】
- 博士課程に進学するメリット/デメリット
- 博士課程進学の際に考えておくべきこと
本記事の信憑性
僕は現在旧帝大学院の修士2年生として研究を行っています。そして周りには博士課程の先輩方ががこれまで関わって人も含めると5人ほどいます。
そんな僕が博士課程について解説を行います。
博士課程について解説【修士課程との比較あり】

本記事では大学院進学後の博士課程について説明します。まず博士課程とは何?という点について以下の2点を解説します。
- 卒業までの年数や、入学方法などの制度面
- 修士学生と比較して異なる点【博士学生と研究室生活を送る僕が解説】
卒業までの年数や、入学方法などの制度面
まず卒業までに要する年数については以下の表を参考にしてください。
卒業に必要な年数
学部 | 学士過程 | 修士過程 | 博士課程 |
一般的な学部 | 4年間 | 2年間 | 3年間 |
薬学部 | 6年間(修士課程はない) | 4年間 | |
歯学部 | 6年間(修士課程はない) | 4年間 |
上記の通り。
つまり、大学院には5年在籍することになり、修士課程の人よりも3年間長い。
年数について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。それぞれの就職先についての解説も行っています。
»大学院は何年で卒業できるの?【修士・博士で卒業年が違う】の記事はこちら
そして博士過程への進学には条件が必要です。進学に関しては、文部科学省がこのように定めています。
博士課程(後期)の入学資格は以下のいずれかに該当する方に認められます。
・修士の学位や専門職学位を有する者(法第102条第1項)
・外国において、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第1号)
・外国の学校が行う通信教育を我が国において履修し、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第2号)
・我が国において、外国の大学院相当として指定した外国の学校の課程(文部科学大臣指定外国大学(大学院相当)日本校)を修了し、修士の学位や専門職学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第3号)
・国際連合大学の課程を修了し、修士の学位に相当する学位を授与された者(施行規則第156条第4号)
・大学等を卒業し、大学、研究所等において2年以上研究に従事した者で、大学院において、修士の学位を有する者と同等の学力があると認めた者(平成元年文部省告示第118号)
・大学院において個別の入学資格審査により認めた24歳以上の者(施行規則第156条第7号)
つまり簡単にまとめると、修士課程を卒業し、博士課程の入学試験を合格することが入学条件です。
修士学生と比較して異なる点【博士学生と研究室生活を送る僕が解説】
そして博士課程の学生と修士課程の学生は、研究室が同じであれば同じ空間で研究を行います。ですので、基本的に博士課程に進学しても、修士課程と特別変わりません。その中でも僕が感じる違いを以下に列挙しました。
博士過程と修士課程の違い
- 発表が全て英語
- 与えられる研究テーマの難易度が高い
- 学会への参加機会が多い
- 先生方からの質問内容がより専門的で回答が難しい
- 夜遅くまで研究している
※僕の研究室の話ですので、他の研究室では異なる点はあるはずです。
とても大変そうですね。

「これだけ聞いたらなんだかすごく大変そう。博士課程に進学する人はなんで行くの?」
そうですよね、ここからは博士課程進学のメリットとデメリットについて解説していきます。
博士課程に進学するメリット/デメリット
博士課程に進学することは上述した内容とも重複しますが、多数派とは言えません。
しっかりとメリット・デメリットを考慮した上で、進学を決断するといいでしょう。
博士課程進学のメリット
メリットに関しては以下です。
- 「博士」の称号【専門性と希少性がある】
- 大学院での研究期間が伸びる
上記を深掘りします。
「博士」の称号【専門性と希少性がある】
まず上述の通り、博士課程は修士課程で卒業するよりも長く研究を続け、さらにハイレベルな要求をされます。
つまり、専門性は修士課程で卒業した学生よりも圧倒的に高いです。
また博士過程を卒業した学生は非常に稀です。
博士課程への進学割合は、24歳人口の0.7%
中央教育審議会大学分科会大学院部会(第81回)H29.5.30の資料を参考
このように人口のごく一部しかいないため、とても希少ですね。
大学院での研究期間が伸びる
ほとんどの博士課程進学をする学生は「研究が好き」という気持ちを持っています。ですので、大学院での研究期間が伸びることはメリットになります。

「企業の研究職ではダメなの?」
企業の研究よりも大学院での研究の方が自由度が高いです。ですので研究と給料の両者を天秤にかけ、前者が勝つなら博士課程へ進学し、後者が勝つなら企業への就職といった感じですね。
メリットに関してはここまででして、続いてデメリットについても解説します。
博士課程進学のデメリット
- 将来への視野が狭くなる
- 研究がうまく行かないと精神的に辛い
- 社会に出るのが遅くなる
上記の通り。こちらについても解説を行います。
将来への視野が狭くなる
これは専門性がつくことの裏返しです。もちろん博士課程を卒業して、全く関係のない分野に就職することも可能です。しかしおそらく、その時頭によぎるのはこれまで培った専門性を捨てる事への戸惑いです。
ずっと研究をしてきたから、研究職以外に就職したら自分は今まで何をしてきたかわからない。。。
研究職以外への就職なら博士課程に進学する意味あったのかな?
こんな感じです。なので、ほとんどのケースでは企業でも研究を続けることになるということを覚悟すべきでしょう。
研究がうまく行かないと精神的に辛い
僕の研究室にも何名かいらっしゃいましたが、修士課程と合わせて5年間在籍することになります。そして、研究室では毎日研究を行っています。
もしこの状況で研究がずっと上手く行かなかったらどうでしょう?
これだけの時間と労力を割いているのに上手く行かないなんて悲しい。
自分は研究に向いていないのかもしれない。
逃げ出したい。
こんな心境になるのでしょう。実際僕は現在修士課程2年ですが、研究がずっとうまく行かずに悩んだ時期がありました。なので上記の気持ちはよくわかりますし、僕よりもその期間が長いともなれば、精神的に病んでしまうのは無理もないでしょう。詳しくは以下の記事。
社会に出るのが遅れる
また将来的に社会人になるつもりのある方ですと、こちらはかなり大きなビハインドのように思います。
社会人としてのマナーや礼儀などを大学院で教わることはもちろんありません。また学部卒の同じ年齢の学生は社会経験を五年間も積んでいます。この差は思った以上に大きいかなと思います。
また親戚などの集まりでも、負い目を感じることもあります。「他の年齢が近い親戚は社会人になっているのに、自分はまだ学生か。。。」と思うことがあります。
※実際に修士課程2年の僕ですらあります。
博士課程進学の際に考えておくべきこと
ここから解説する博士課程に進学するまでに考えるべきことはメリット・デメリットどちらが自分の中で大きいかを考えるということになります。それぞれを再掲します。
博士課程進学のメリット
- 「博士」の称号【専門性と希少性がある】
- 大学院での研究期間が伸びる
博士課程進学のデメリット
- 将来への視野が狭くなる
- 研究がうまく行かないと精神的に辛い
- 社会に出るのが遅くなる
上記の通り。博士課程に進学する際に最も考えなければいけないのがこちらだと思います。
「研究」が好きかどうか
例えば研究が本当に好きであれば上述したデメリットはこんな感じでデメリットではなくなります。
- 将来への視野が狭くなる→研究しか興味がないので、専門性を高める方が得
- 研究がうまく行かないと精神的に辛い→研究は上手くいっていないものを成功させるところが醍醐味
- 社会に出るのが遅くなる→好きな研究がたくさんできる
一方で、研究が好きでない場合には、メリットはデメリットへと変わります。
- 「博士」の称号【専門性と希少性がある】→今後企業でも研究をする可能性が高くなる
- 大学院での研究期間が伸びる→好きでないことをする時間が増えてしまう
こんな感じですね。つまり研究が好きかどうかをしっかり考えましょう。
本記事は以上になります。ここまでご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
また今回の記事をはじめとした大学院に関する記事はこちらの【大学院とは】入試から生活までを現役旧帝大学院生が網羅的に解説した記事にまとめられています。大学院入試から大学院生活のことまで網羅的に記事を展開していますので、気になる方はご覧ください。